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静馬にとって2月は、節分とバレンタインと、
あと赤マスに止まるとべらぼうな金が減る以外には印象がない。
静かであるが、少し退屈な日々である。
あんまり退屈なので静馬は沙耶を誘って街に出てみることにした。
電車にがたんがたんと揺られながら、ひとつ駅を。
――少し頑張れば自転車でも行ける距離だったのだが、
このびゅうびゅうと寒い風の中を走る気にはなれない。
とりあえず街についたものの、どうしたものか。
静馬は特に何をすると決めてたわけでもないので、映画でも見ようと提案した。
映画は共通の趣味であり、提案すると沙耶もすんなりと頷いた。
映画館には大した客もなく、上映ぎりぎりの時間だったが、中央辺りのよい席が取れた。
映画は沙耶が見たいといったホラー映画なのだが、静馬はホラー映画が大の苦手だった。
無駄とわかりながらも他のを提案したものの、沙耶を説得するにはいたらず。
いつも折れるのは静馬のほうだ。子供の頃からずっとそうである。
映画開始からわずか5分で、むごたらしく人が死んだ。
みっともなく絶叫しまいと頑張ったものの、静馬はかなり限界に近い心持だった。
「あんなふうに人間を殺して、とても正気の沙汰じゃ……」
静馬が心臓をばくばくさせながら言った。
スクリーンを見ないようにとは思ってるものの、
ついつい眼がそちらに向かってしまい、また眼をそらしたところで音からは逃れられない。
「沙耶はよくこんなのを好んで見れますね。僕にはその気持ちがわかりませんよ」
スクリーンから眼を離さず沙耶は、けらけらと笑いながら答えた。
「だぁってこれは作り物じゃないですか、静馬くん」
「そうは言いますけど……」
どう見ても僕には本物にしか見えない。
「ははは、相変わらず想像力が豊かなんですね」
それから、映画が盛り上がるにつれて、ほとんど静馬は絶叫していて、
それを沙耶は映画よりも面白そうにながめていた。